秋のお彼岸の中日、御池にある老舗旅館「柊家」六代目女将、西村明美さんの「京のおもてなし」についてお話を聴く機会がありました。
この家の長女として育った女将が「おもてなし」について学んだ人が、この旅館で仲居暦六十年、故人、田口八重(岐阜県中津川出身)でした。
1937年、28歳で仲居として働きはじめ、69年に接客業で初めて、黄綬褒章を受章。91歳になるまで望んで働き続けた方です。
八重の著書「おこしやす」は、いつも手元におき、何かあった時は必ず開くようにしているそうで、今でも女将の心の拠り所とのこと。
八重は、ここを定宿としていた川端康成から本にしたいという申し出に対し、個人的なことまで世にでることをためらい断ったそうで、その後ノーベル賞受賞、「やはり書いてもらった方が良かったかなぁ」と感想を述べていたとのこと。
旅館入口の額に掲げられている「来者如帰((らいしゃにょき)」。
来る者、帰るが如し。柊家にお越しになられたお客様に、まるで我が家に帰られたようにくつろいでいただきますように」という思いがあります。快適な空間の提供がポリシー。
「サービス」(Service)は対価として誠心誠意、提供するもの。一方、「おもてなし」(Omote-nashi)は、主客同一・対等の立場で主人がお客さまのために尽くすもの。
「おもてなし」には、主人の好意を理解できる知識や信頼関係が必要のようです。京のお茶屋の代名詞「一見さんお断り」も、実はおもてなしのためには必要なことかもしれません。
仮にお相手がおもてなしに気づかなくとも、おもてなしにより自分を磨くことになり、いっこうに構わないとのこと。まさに無償の愛のようです。
今回のお話を伺い、外国のお客様にサービスとおもてなしの違いを理解してもらう解は、京都人の慣習、文化を理解して頂くことが必要かと感じました。
ご先祖さまも徳を高めたお話でした。合掌。